映画ザビエル

時間を費やす価値のある映画をご紹介します。

英国製サマータイムマシンブルース

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アバウト・タイム 愛おしい時間について

 映画情報

 

だいたいこんな話(作品概要)

イギリス郊外のコーンウォールで、豊かな自然と温かい家族に囲まれ育ったティムは21歳の誕生日に、父親から自分たちの家系がタイムトラベル可能であることを知らされる。

ごく淡々と男児のみに与えられた能力であることや、その方法を伝授され、愉快な父親による冗談に違いないと自分の部屋に戻った。ところが、言われた通りにやってみると願った時間と場所にタイムトラベルは成功した。

未来には行くことが出来ない、自分が生まれる以前にも遡ることは不可能。ただし副作用などはなさそうだった。暗い小部屋、たとえばクローゼットやトイレなどで、拳を握り強く念じるだけでイメージした過去に戻れることが分かった。

まだ若いティムは、その夏に出会った麗しいシャーロットと付き合うために、タイムトラベルを駆使してチャレンジを重ねるのだが。

 

わたくし的見解/やはり一度きりの人生

夏になると、映画化もされた劇団ヨーロッパ企画の当たり作品「サマータイムマシン・ブルース」に思いを馳せてしまいます。真夏の部室で、エアコンのリモコンを壊してしまったことから、昨日のまだ壊れていないリモコンを取りに行くだけのために、学生たちは、せっかく手に入れた最強の道具タイムマシンを使ってしまうという、大変のどかな物語です。

いや、もっと有意義な使い道がいくらでもあるだろう。と思う反面、とっさに思いつく過去に戻ってやり直したいことなんて案外その程度のものかも知れないと、今年のような酷暑の中にあっては妙に納得してしまいます。本作「アバウトタイム」の主人公も、とても善良で幸せな青年で、まずは初恋を実らせるために夏の休暇を何度か繰り返してみるものの、結局上手くいきません。

おや、これはタイムマシンものの中でも運命論的なやつなのだろうか、と構えを改めながら観賞することになりました。運命論的なやつ、と私が呼んでいるのはタイムトラベル、タイムリープ等を取り扱ったものの中でも、過去を変えても未来がある程度しか動かせないオチに持っていくタイプの作品です。

つまり主人公の思惑どおりに多少は未来が修正されるものの、どうやっても変えられない決定された未来があるパターンのもの。「ターミネーター」は、続編などで何度か軌道修正を繰り返しても、審判の日は訪れてしまいます。

また「バタフライ・エフェクト」という作品も、大好きな女の子を救うために幾度も過去を修正するのですが、どんなにやり直しても自分と一緒に幸せになる未来が存在しない。そのため主人公は、彼女を助けることを何よりも優先させ、苦渋の決断で別々の将来を歩むを選択する、切ない映画でした。

本作も、やり直せるからって人生そんなに甘くないんだぜ系であることは間違いないのですが、上記の2作品と異なり、とにかく平和で爽やか。そしてノリは全く違っても「サマータイムマシン・ブルース」を彷彿とさせる何とも微笑ましい、サブタイトルどおり「愛おしい」作品だったのです。

主人公のティムは初恋を諦めたのちロンドンに移り、弁護士として忙しい日々を過ごし始めます。その中で、これは運命の女性ではと思える出会いが。ところが下宿させてもらっている父の古くからの友人のために、過去をやり直してしまった。そのせいで運命の彼女と知り合わなかったことになってしまったのです。

ここからのティムの、もう一度彼女と巡り合うための七転八倒は、いわゆるラブコメ。その先、全く趣の異なる展開をしていくところが作品の魅力でもあるけれど、あまり多くは語らないでおきましょう。

超絶美人でホットな初恋の女性を、今をときめくマーゴット・ロビーが、キュートな運命のお相手はレイチェル・マクアダムスが演じており、ヒロインたちは有名&キレイどころを押さえつつ、何よりも最高なのは父親役のビル・ナイ

タイムトラベルによって一体、人の何倍人生を謳歌してきたのだろうと、良い意味で勘ぐってしまう父親からの心温まる箴言の数々は、この夏の暑さにヘトヘトに疲れきっている私を潤し、癒してくれました。

リアルな日常においては、なかなか実感出来なくとも、人生って素晴らしい! と素直に感じられる作品は、やっぱり素敵です。