映画ザビエル

時間を費やす価値のある映画をご紹介します。

"Misirlou" 丸腰刑事のテーマ

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パルプ・フィクション

映画情報

だいたいこんな話(作品概要)

低俗小説(パルプ・フィクション)的エピソードを集積させ、オムニバス仕立てにしたクライムムービー。ヴァイオレンス、コメディの要素も強い。

ギャングのボスと二人の部下、ボスの妻、ボスが八百長を仕掛けたプロボクサーのエピソードがストーリーの主軸。94年アカデミー賞脚本賞カンヌ映画祭パルムドール獲得。

わたくし的見解

昨年末からブレイクし、今年のR-1ぐらんぷりで優勝したアキラ100%さん。丸腰刑事のテーマ曲が「パルプ・フィクション」のセンセーショナルなオープニングテーマと同一なのです。

あらためて本当にこの曲かっこいいなぁ、なんて感心しながら丸腰刑事の巧みなオボンさばきを眺めていたら、無性に「パルプ・フィクション」を観たくなってしまい、20年ぶりくらいで再鑑賞。

映画の冒頭で、パルプ・フィクションなる言葉の意味がテロップで表示されますが、まさに煽情的な音楽です。血湧き肉躍る、とはこの事か。

タランティーノの監督デビュー作「レザボア・ドッグス」に心酔した男子たちにとっては、満を持しての二作目でありメジャー作品と言えるものでした。一般の人にとっては、タランティーノは「パルプ・フィクション」から、のイメージが強いのではないでしょうか。

キル・ビル」のインパクトが強すぎるユマ・サーマンも、この頃は前後して「ガタカ」などの出演もあり、正統派のファッション・アイコン的存在。劇中、アニエス・ベーを見事に着こなしツイスト・コンテストに出場する彼女を、私も心底COOL、すこぶるイイ女だと憧れておりました。

また公開当時は、あの「サタデーナイト・フィーバー」のジョン・トラボルタが残念なくらい中年太りして、だけれども踊るとやっぱり格好いい! と騒がれていましたが、わたくし個人は往年の映画への思い入れもない世代のため、彼の長髪も似合うと思えず、欧米人がセクシーとのたまう割れた顎も解せず、正直ピンときていませんでした。

しかし時を経て鑑賞してみると、やはりジョン・トラボルタのダンスの実力はまったく目を見張るものがあり、超絶COOL。ユマ・サーマンとのツイスト・コンテストシーンは、ほんま痺れます。

激しさだけで踊る(しかし顔は無表情の)ユマ・サーマンに対し、あくまで冷静で、ともすればアンニュイに軽く流して踊るジョン・トラボルタ。彼がこの作品を機に、大人の俳優として返り咲いたと言っても過言ではないかも知れません。以降は、ちょっとクセのある、個性的な悪役として活躍する機会が増えます。

オムニバスの中で(プロローグを除く)最初のエピソードとして、ギャングのボスの妻であるユマ・サーマンとボスの部下の一人ジョン・トラボルタが、ボスの命令で食事に行きます。

他の部下が妻の足をマッサージしただけで、ボスから半殺しにあったと噂に聞いたヴィンセント(ジョン・トラボルタ)は、とにかく穏便に食事を済ませ家まで送り届けたい。しかし、ボスの妻ミアは美しく魅力的で、良い雰囲気になってしまった二人。

抗いがたいミアの魅力と、ボスへの忠誠心の間で煩悶していると、急転直下で下心が吹き飛ばされる事態に見舞われます。ユマ・サーマンは鼻血を出しても格好よく、すったもんだがありながら、最後は無事にミアを家まで送ったジョン・トラボルタの気障な去り際も、大変に洒落ています。

タイトル通り、くだらなく実に低俗なエピソードで構成されたオムニバスですが、時系列の置き換えだけでなく各エピソードのリンクの仕方が洗練されていて、下品なのにスタイリッシュの極み。それが「パルプ・フィクション」のすべて。

ほぼ同じ頃の作品「レオン」の悪徳警官、ゲイリー・オールドマンを俳優たちが真似したがるように、当時のクリエイターは「パルプ・フィクション」をこぞって真似した、そんな作品でした。

今観ても、この手のオムニバス作品の最高峰に位置していると感じますし、あの頃得た興奮、映画体験は何ものにも代え難い。

劇場鑑賞以降、20年あまり観ていなかった間もオープニングテーマの「ミシルルー」と、サミュエル・L・ジャクソンの唱える、旧約聖書のエゼキエル25章17節はずっと脳裏に残っており、また今後も私の頭から完全に消え去ることのない響きなのだろうと思えました。