How cute she is!(感嘆文)
ロッタちゃん はじめてのおつかい
映画情報
- 原題:Lotta flyttar hemifrån
- 公開年度:1993年
- 制作国・地域:スウェーデン
- 上映時間:86分
- 監督:ヨハンナ・ハルド
- 出演:グレテ・ハヴネショルド、ベアトリース・イェールオース、クラース・マルムベリー
だいたいこんな話(作品概要)
「長くつ下のピッピ」で知られる、アストリッド・リンドグレーンの児童文学を原作とした作品。「ロッタちゃん」シリーズとしては、二作目。
両親、兄、姉と共に暮らす5歳の女の子、ロッタちゃんの織りなす日常のささやかな出来事を、季節の移ろいの中で描くハートフル・ドラマ。本作はクリスマスを中心とした、冬から春にかけての物語。
わたくし的見解
どレミふぁ ソ・ら・シど♪
てなテーマ曲とともに、ちびっ子が初めてのお使いに四苦八苦する姿を、大人が見て「おぅ! なんと、いたいけであることか」と感動し、むせび泣くTVショウがあったと思う。
この映画は日本のそれとは少々趣きが違って、何が違うって、やはり主人公のロッタちゃん。彼女だって、日本のTVショウの子供らと同じく、そりゃあもう「いたいけ」で「いたいけ」が服着て歩いてるのだから、それを可愛いと言わずに何と言う。
ただ、ロッタちゃんは乳歯抜けずして、すでにパンキッシュ。その反骨精神あふれる、しかめっ面が空前絶後にラブリーなのだ。超絶カッコイイとさえ感じてしまう。思わず、羨望のまなざし。
ついつい、しかめっ面を真似したくなるけれど、身の丈を知っているので我慢せねばならない。オバさんがしかめ面して歩いてたら、石投げられますからね。かと言って、あんまりヘラヘラしていたら通報されるし。生きるって、つらいことばかり。
パンク女児ロッタちゃんは、二ヒルでストイックでもある。奈良美智の描く女の子みたい。と思っていたら、日本での劇場公開時のポスター画は奈良美智作品なのだとか。当時の配給会社も、似てると思ったのだろう。
「冬冬の夏休み」という台湾映画を紹介した時にも同じ理由を述べたが、日本の映像作品やハリウッド映画の、例えば「ホーム・アローン」のような子供描写をしない点が、わたくしとしては大変に好もしく感じている。子供は可愛く演出などしなくても、放っておいても可愛いのだ。
加えて、このシリーズ作品の心地よさは、ロッタちゃんに対する両親たち大人の反応によるところも大きい。些細なことで、大人の女性顔負けの不機嫌ぶりを見せつけるロッタちゃんを相手に、余裕も余裕。パパやママが、とても大らかに振る舞う様子は、見ていてホッとする。
親サイドのイライラ感は見受けられない上に、かと言って子供を甘やかしている印象もまったくしない。日本でも今どきは、怒らない(叱らない?)しつけを実践しておられる親御さんを見ることも少なくないが、その方向の子育てとしては、この映画の感じがきっと理想なんだろうなと思う。
本作では、タイトルの「おつかい」をはじめとして、さまざまな日常的エピソードをオムニバスのような形で見せていき、ロッタちゃんの冬の物語はクリスマスを迎える。そして、彼女が天下無敵だと知ることとなる。
その昔「涙は女の武器じゃけぇ、マスカラは透明って決めとるんよ」と、知り合いの広島県民が言っていたが(ウォータープルーフでええがな、といふ噂もありけり)ロッタちゃんも5歳にして、すでに女の武器の威力を知り尽くしている。
しかし、バブぅっていう程ガキやない。くもん行くほど大人やない(byアキナ)いたいけな5歳の女児の、最強必殺技がきかぬ相手が登場する。ラスボス(最終にして最強の敵の意だが、この映画では最終ではなく中盤のクライマックスに登場する)は、彼女とは他人のよそ者のオッさん。
ロッタちゃんは最大のピンチをむかえるが、その時、不思議なことが起こった。安っぽい宗教家なら、それを奇跡と呼んだだろう。
どどめ色ハートの私は、その奇跡(神様のご都合主義)を前にして恥を知った。この、ご都合主義があまりに鮮やかで、美しいほどに見事だったから。
「こんな子おるおる」と言いたくなる、怖いもの知らずの末っ子パワー。ロッタちゃんの持つ根拠のない自信と、底抜けスーパーポジティブ・シンキングが巻き起こすラッキーの数々を、とくとご覧あれ。
一家団らんのクリスマスが過ぎイースターの春がやって来ると、ロッタちゃんは前歯が抜け、イヴにはツリーがないと大泣きしていた、ロッタちゃんのお兄ちゃんも声変わりしていて。
そんな子供らのありきたりの成長に、おほほんと笑みがこぼれてしまう、実に罪のない作品。クリスマスに、こんなんどうでっしゃろ?