映画ザビエル

時間を費やす価値のある映画をご紹介します。

ダンカン、ばかやろう

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ミッション:8ミニッツ

映画情報

だいたいこんな話(作品概要)

アメリカ陸軍パイロットのスティーブンス大尉は、午前7時40分、シカゴに向かう通勤電車の中で目覚める。8分後、電車は爆発し乗員乗客は全員死亡した。

スティーブンス大尉は不思議な空間で再び意識を取り戻し、爆発前に体験した8分間は、その事故で死亡した他人の記憶を体験したものだと説明される。

同じ爆弾魔によって予告された次の犯行を阻止するべく、他者の記憶を自らの脳内で体験できるシステムを利用し、犯人につながる情報を得るため列車での8分間を何度も繰り返す任務を遂行するのだが。

わたくし的見解

量子力学のことは分からない。リョーシリキガク、何それ食べれるのお?の領域である。もちろん食べられないことくらい重々承知なのだが。

めっきり日本物理科学研究の十八番芸、量子力学に明るければ、それはそれで、この素敵な映画がバカバカしく思えてしまいそうな気もするので、無知であることも、この際ラッキーだぜと思った。

公開当時、この作品がどのようにプロモーションされていたのかを知らなかったため、映画通が騙されるオチ、なるものに妙な期待値を上げることなく映画を満喫。

つねづね感じている愚痴をひとつ披露させて頂くと「驚きの結末!!」とか「ラスト○分間であなたは絶対だまされるぅぅぅぅ!」みたいな宣伝の仕方って、ものすごく逆効果だと思うんですけれど。

ダサイし、センスもない。挙げ句、作品に対する愛情もあまりないと思う。

ちなみに映画通の間では、ジェイク・ギレンホール出演作にハズレなしという噂があったりなかったりします。

ちなみにちなみに、監督ダンカン・ジョーンズ父親は先日亡くなったデヴィット・ボウイ。本作は監督の二作目の長編作品で、一作目を観たジェイク・ギレンホールがこの作品を監督に持ちかけたらしいので、ハズレなしの噂はあながちなくはないのかも。

さて、映画通でなくても物語をいくつか知っていれば容易に想像できてしまう「実は○○だった」という展開が、比較的早めに種明かしされるところが巧いなと思う。

これは監督の前作「月に囚われた男」の時もそうで、ひとつ目の種明かしは早々に片付け、そこから展開することで鑑賞時間はタイトなのに密度の濃い物語を体験した印象が残る。

とても得した気分。前作との共通点をさらに持ち出すならば、インチキ臭いSFもののインチキ臭さを吹き飛ばす、人間臭さの丁寧な描き方だろうか。

邦題のとおり、主人公は「8分間のミッション」を何度もやらされる。それはつまり、8分経ったら死ぬ(体験)を延々と繰り返しやらされることなのだが、人間は当然その理不尽さに「なんで?」と感じる。

目的があってのこととは言え、一度「なんで? こんなことさせられてんの、オレ」となってしまったが最後、何百万といるシカゴ市民の命を救うために! と、もっともらしいことを言われてもダメ。気になって仕方ない。そして、目的達成の前に「なんで?」を解決しようと奔走する。

なかには四の五の言わないで、チャッチャと目的を達成させろよ、と感じる人もいるかも知れない。でも、この人間臭い遠回りがなく、主人公があっさりヒーローになってしまっては、ただのインチキ臭いSFで終わるように私は感じた。

月に囚われた男」に引き続き、こういう時に人間て案外そうなのかも知れないな、とか、人間てこんな風に生きていたいのかも(あるいは、そんな風には生きていたくないのかも)と納得してしまうリアリティーに心奪われて、見事にインチキ臭さを忘れ作品を楽しみました。

映画通でも云々かんぬんハンマカンマというラストついては、のび太ドラえもんのおかげで、ジャイ子じゃなくて静香ちゃんと結婚しても、なんだかんだで上手いこと、ひ孫はセワシくんになる。というのを思い出してしまい、私は嫌いじゃないです(あれがあってもなくても好きですけどね)。

てことで、たけしさんは一度も言ったことないらしいけれど、たけしさんのモノマネで監督に「ダンカン、ばかやろう」と言いたい。大きな愛情と敬意を込めて。